リトミックは子どもにいいと聞いたことがあっても「言葉は聞いたことがあるけど、何をするのかわからない」「リトミック教室がありすぎて選べない」などの悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか。
リトミックは音楽と触れ合いながら身体を動かし、子どもの表現力を養う教育で、幼児期から行うことができ、さまざまな能力に働きかけてくれます。
将来、楽器を習わせたいと考えている人だけではなく、身体的能力やコミュニケーション能力など多方面にいい影響があり、親子で触れ合う時間を増やしたいなどの目的で始める人も少なくありません。
本記事では、リトミックに興味を持っている方へ、リトミックの概要とどのようなメリットがあるのかなどを詳しく解説します。
教室選びのポイントも紹介するため、リトミックを始めるか悩んでいる人も必見です。
リトミック教育とは
リトミックとは、音楽に合わせて身体を自由に動かし、表現力を養う教育のことです。
早い段階で演奏技術を学ぶよりも、先に音楽を楽しむことを全身で感じることが大切であるという考えから生まれたリトミックは、保育園や幼稚園でも取り入れられています。
リトミックは、20世紀初頭にスイスのジュネーブの作曲家であるエミール・ジャック=ダルクローズが創案した音楽教育法で、イギリスやドイツ、フランス・アメリカなど世界に広まりました。
日本でも明治時代から教育家や音楽家がヨーロッパで学び、各々の分野で取り入れており、戦後にニューヨークで学んだ板野平が本格的なリトミック教育を日本に広めたといわれています。
リトミックは子どもが乳幼児のときからできる習い事の一つでもあり、音楽と触れ合いながら音楽能力を伸ばすだけではなく、身体的能力や感性、知性などあらゆる潜在的な基礎能力に働きかけます。
具体的には音感やリズム感などの音楽能力に加え、音楽に合わせて身体を動かすため運動能力の向上も期待できます。関節の使い方なども学習するため、柔軟性やバランス感覚も身につくことでしょう。
また、集中力や記憶力が高まったり、協調性が育まれたり、子どものさまざまな発育を促してくれます。
リトミックには三つの要素がある
リトミックには以下の3つの要素があり、それぞれが相互に作用しています。
- ソルフェージュ
- リブミックムーブメント
- インプロヴィゼイション
具体的にどのような音楽教育を行うのか見ていきましょう。
ソルフェージュ
リトミックでいうソルフェージュとは、音を聴いて楽譜を読んだり、身体を動かしながら歌を通して音程を確認したりして、子どもの音楽を聴く力と表現力を育て、人間力の向上を図ることです。
ソルフェージュでは子どもの反応を見て音楽を変更したり、強弱をつけて見たりと、五感を刺激する目的もあります。
リズミックムーブメント
リズミックムーブメントは、音に合わせて身体を動かし、リズムを感じながら音への理解を深めます。
それぞれ好きな動きを楽しみ、ジャンプをしたり、スキップをしたり、床を転がってみたりと実にさまざまです。音楽だけではなく、柔軟性やバランス感覚などの運動能力を高める効果が期待できます。
インプロヴィゼイション
インプロヴィゼイションとは即興演奏のことで、ソルフェージュやリズミックムーブメントで得た経験を基に、自由に音楽を表現することです。音を通して自分を表現する力を育みます。
インプロヴィゼイションは、リトミックの最終段階で自分自身の音楽を創る経験ができる重要な要素です。
リトミックに通うメリット・効果
個人差はありますが、リトミックに通うとさまざまな効果が期待できます。リトミックに通うメリットを紹介します。
音楽的な感覚が養われる
リトミックは、音感やリズム感など音楽的な感覚が、幼いころから養えるのがメリットです。曲に合わせて身体を動かすことで、音の高さや強弱を理解します。
テンポが速い曲とゆっくりした曲では、身体の動かし方が異なるため、動きの変化を通して、音楽にリズムがあることに気づきます。
リトミックは0歳から始められるため、楽器を始める前から音楽に触れることができ、子どもにピアノを習わせたいと考えている人は準備として取り入れるのもおすすめです。
身体機能が向上する
リトミックは歩く・走る・ジャンプ・スキップなどの動作、転がる・揺れる・ねじるなど肩や腰などを使い、手指だけではなく身体全体を使って音楽を楽しむため、身体機能の向上が見込めるのもメリットでしょう。
最初はうまくできなくても、音に合わせてだんだんと身体を動かせるようになってくるため、バランス感覚や柔軟性が育まれるだけではなく、ポジティブな感情が生まれ、積極的に取り組めるようになり、表現力も豊かになってきます。
コミュニケーション能力が向上する
リトミックは同じ年齢の子どもたちと一緒に活動するため、協調性や社会性などのコミュニケーション能力が向上します。コミュニケーションを取るには相手の話を聞く力と、自分の話す力が必要です。
リトミックでは仲間と一緒に活動するため、相手の気持ちを考えたり、自分の感情をわかりやすく表現したりする能力が自然と身につくため、コミュニケーション能力が高まります。
友達と歌ったり、踊ったりすると一体感や達成感も生まれ、協力する大切さや喜びを感じることができるでしょう。
集中力が高まる
集中力を高めるには、関係のない情報は遮断し、一つのことに意識を集めなくてはなりません。リトミックでは音に合わせて動くには、音楽をよく聴き、どのタイミングで動くのかを覚える必要があります。
また、即興演奏は周りの音も聴きながら、タイミングを合わせて音を出さなくてはなりません。
リトミックでよく聴き、いつ動くのか、周りにどのように合わせればいいのかを繰り返していくと、自然と集中力や記憶力、判断力が鍛えられるのもメリットです。
リトミックに通うデメリット
リトミックは魅力的なメリットがありますが、デメリットも存在します。メリットだけではなく、デメリットも理解した上でリトミックを行いましょう。
短期間で効果が出るものではない
リトミックを始めるとすぐに音感がつく、運動能力が上がるなど、即効性があるわけではありません。
継続すると徐々に効果が表れてくるのがリトミックの特徴です。ピアノのように「曲が弾けるようになった」などの成果物がなく結果がはっきり見えるものではないため、効果を感じにくいデメリットがあります。
リトミックが合わない子がいる
音に敏感な子どもは、大きな音などが苦手でリトミックが合わないケースもあります。
また、リトミックは集団で行うため、人が大勢いる場所が苦手な子どもは嫌がることも。
徐々に慣れてくる場合もありますが、子どもがリトミックを楽しめていないと感じたときは家でゆっくりと家族で音楽を楽しむといいでしょう。自宅でリトミックができるDVDや動画などもあります。
年齢に合ったリトミックの内容
リトミックは、子どもの発育段階に合わせてレッスン内容が異なります。年齢別にどのようなリトミックを行っているのか確認していきましょう。
【0歳児】音楽に合わせてスキンシップを取る
0歳児のリトミックはベビーリトミックとも呼ばれ、ベビーマッサージのようなスキンシップがメインです。首がすわり始めたころから開始できます。
0歳児は自分で身体を動かしたり、表現をしたりは難しいため、指導者や保護者が音楽に合わせて子どもの顔や手に触れたり、抱いて身体をゆすったり、歌を歌ってみたりします。
何もわかっていないように見えても、さまざまなことを感じ取っている0歳児。親子の絆を深めることでコミュニケーションの基盤を作れます。
【1歳児】簡単な動きを楽しむ
1歳児になると自分で歌うことは難しいですが、大人の動作に興味を持ち始め真似して身体を動かせるようになってきます。
リズムに合わせて身体を揺らしたり、簡単な歌を歌いながら振り付けをしたり、カスタネットや鈴、タンバリン・マラカスなどの楽器で遊ぶこともあります。
子どもの好きな歌を取り入れるなど、興味を持ってもらう工夫が大切です。
【2歳児】友達と交流ができるようになる
主に親子で楽しむのがメインのリトミックだった0~1歳児ですが、2歳児になると友達とも交流ができるようになります。
音楽の中で表現したことをイメージできるよう、貼り絵や折り紙、色ぬりなどを行うこともあります。
【3歳児】大人の指示を理解し始める
3歳児になると、身体的能力も上がりますが、言語能力がさらに発達します。言葉を理解する力がつき、大人の指示に合わせて自分なりに考えながら動ける時期です。
リズム遊びや楽器を鳴らす、絵を描く、色のついたカードや棒などを使って数を学ぶなど、手指の感覚を養うことで表現力の幅を広げていきます。
【4歳児】音のテンポに合わせて身体を動かす
4歳児は音階も理解し始め、音のテンポに合わせて身体を動かせるようになるのが特徴です。
真似をするだけではなく、多少複雑な動きもできるようになるため、今まで得たパターンを組み合わせて、自分で考えて表現をするようになってきます。
歌ったり、リズムに合わせて身体を動かしたりするだけではなく、音符や拍子なども学習し、簡単な楽譜を書くなど音楽の理解を深めます。
【5歳児】幅広くリズムや表現に触れられるよう活動をする
5歳児は友達との関係を把握して、協力できるようになってきます。一つのことをしながら、他のことを考えられるようになってくるため、自主性を高められるよう、5歳児のリトミックは幅広いリズムや表現に触れます。
自分の書いた楽譜を見て歌ったり、カードを使って拍子と音符を学んだり、提示されたストーリーに対し自分で動きを考えたり、個性も生かした人格形成を図るのが目的です。
リトミック教室の選び方
リトミックは保育園や幼稚園で取り入れていることもありますが、本格的に学ぶのであれば習い事として継続していきたいものです。
しかし、さまざまなリトミック教室があり、カリキュラムも定まっていないため、どのようなことに気をつけながら教室を選べばいいのか悩んでいる人も多いでしょう。
質のいいレッスンを受けられる、リトミック教室の選び方のポイントを紹介します。
生の楽器を使っているか
CDなどの音源だけではなく、生のピアノや打楽器を使用しているリトミック教室を選びましょう。
生の楽器は子どもの反応を見ながら、強弱や音程を素早く変化させることができるため、子どもたちも瞬時に音に反応できる力が身につきます。
ピアノの生演奏がとくに効果的といわれているため、教室選びに迷ったときは注目してみてください。
自分の子どもと教室の雰囲気は合っているか
自分の子どもがリトミックを継続できそうな環境か確かめることも大切なポイントです。
先生が怖かったり、厳しい指導方針の教室だったりすると、真剣に取り組む子どももいれば、萎縮してしまい表現ができない子どももいます。
反対にフレンドリーな先生や明るい教室でも、なかなかレッスンが進まない、何をしているのかイマイチわからないなど、子どもは楽しそうに取り組んでいても大人から見るとレッスン内容に不満を感じることもあります。
大きな音が苦手、ほかの子どもとのコミュニケーションを避けるなど、リトミック自体が苦手な子どももいるため、通い始める前に見学や体験レッスンに行ってみましょう。
一つのリトミック教室を体験して決めるのではなく、いくつかの教室を回ってみることをおすすめします。
見学や体験レッスンでは、子どもが楽しそうか、講師との相性がよさそうかの確認も大切ですが、身体を動かすため教室内が適温に保たれているか、遊具などが足元に散らかりケガをする恐れがないかなど、環境のチェックも重要です。
レッスン費用は妥当か
リトミック教室に通うには、当然月謝が必要です。
月謝のほかに入会金や施設費などの初期費用がかかることもあります。打楽器やカードなどは教室にあるため、教材費はあまりかかりません。
リトミック教室は月に1~4回と教室によって差があり、回数によって月謝も異なります。
リトミックの専門の団体や音楽教室などは、1回のレッスンで2,000円前後が相場です。自治体などが行っているリトミックは、一般的な教室に比べて少し安価なケースが多いようです。
リトミックは短期間で効果が表れるわけではないため、長期間通うことも考慮し、レッスン費用を払い続けられる、また通い続けられる回数の教室を選びましょう。
また、子どもは体調を崩すこともあり、学校行事が重なる、複数の習い事を行っているなどの理由で、指定された日に通えないことも考えられます。そのためレッスンを急遽休んでも、振替制度がある教室を選ぶと安心です。
年齢ごとに指導法はわかれているか
リトミックは0~6歳ころまでの幼児向けのものですが、同じ幼児でも1歳違うだけで身体的能力や言語能力にかなりの差があります。リトミック教室を選ぶときは、年齢ごとに指導法がしっかりとわかれているかチェックしましょう。
また、同じ1歳でもなりたての子と2歳に近い子では、できることに差が生まれます。
1歳児はまとめてこのコースと決められている教室もありますが、2歳に近くなって能力が十分にあると判断した場合は2歳児のコースに進めるなど、一人一人のニーズに合った対応をしてくれる教室がいいでしょう。
自宅から教室は近いか
リトミック教室は、なるべく自宅から近いほうが通いやすいでしょう。仕事をしている場合は、職場や保育園などから通いやすい場所を選ぶのもおすすめです。
魅力的なレッスン内容だったり、子どもと講師との相性がよかったりしても、自宅や職場などから通いにくい教室は継続が難しくなります。
通いにくい場所にある場合、大人も子どもも疲れてしまいます。リトミックは無理して通っても、楽しめなければ意味がありません。
先生の指導力は十分か
リトミックは資格を持った講師もいれば、趣味で行っている人もおり、レベルはさまざまです。リトミックは声かけが重要で、子どもの想像が膨らむような言葉をかけなくてはなりません。
頻繁に褒めたり認めたり、子どもの自己肯定感が上げられるよう、丁寧なコミュニケーションを取れる講師は指導力がある証拠です。
将来的にピアノを習ってほしいなど、音楽の道に進んでほしい場合は、資格を持っているプロの講師がいるリトミック教室を選ぶといいでしょう。
大手の教室であればリトミック教室だけではなく、一緒に音楽教室を開講している場合もあります。
習い事にして定期的に通うか悩んでいる、一回だけリトミックを試してみたいなどの場合は、趣味レベルで行っている個人教室や地域のサークルなどから初めてみてもいいでしょう。
また、講師が何人いるかも確認してください。
1人だと子どもがぐずってしまうなどのトラブルがあった際にレッスンが中断してしまう恐れがありますが、2人体制であればメインの講師の指導が止まることはないため、スムーズに進みます。
教室の方針と合っているか
さまざまなリトミックがあるため、教室の方針と家庭の教育方針と合っているかも確認しましょう。
リトミックは、音楽をメインにレッスンを行う場合もあれば、身体を動かすことを重要視した教室もあります。
また、絵を描くなど美術に特化した教室や、英語を使ったレッスンを取り入れているケースもあるため、自分の子どもにはどのような方針が合うのか、よく観察してください。
まとめ
リトミックは、音楽能力の向上はもちろんのこと、身体的能力も上がり、集中力や記憶力、判断力などさまざまな子どもの潜在能力に働きかけます。
ただし、短期間で効果が出るものではなく、リトミックが合わない子どももいます。
最初はリトミックを嫌がっていた子どもも、年齢が上がり楽しめるようになったというケースもあるため、長い目で見てあげるといいでしょう。
リトミックはさまざまな教室があります。通い始める前に見学や体験レッスンに行き、生の楽器を使用しているか、子どもが楽しめそうか、年齢に合わせた指導法が行われているかなどのポイントをしっかりチェックしてください。