大人になってからピアノを始めたいと考える人は少なくありません。しかし「ピアノは子どもから習わないと無理なのではないか」「家にピアノがあるので弾いてみたけど上手くならない」など初心者には悩みが多いものです。
プロのピアニストになるのは少々難しいですが、大人からピアノを始めても弾きこなせるようになります。
本記事では、ピアノの初心者に向けて、ピアノの種類や選び方などの基礎知識、ピアノを習うことで得られるもの、上達する練習方法などを詳しく解説します。
ピアノは何歳から始めても大丈夫!
ピアノは何歳から始めても、ある程度は弾けるようになります。プロレベルまで演奏できるようになるのは、幼いころからの訓練が必要なため、大人になってから目指すのは非常に困難です。
指を早く動かす能力は、幼いころにしか身につけられないといわれています。
しかし、好きな曲を弾けるようになりたい、発表会に参加したいなどの目標は、大人になってから始めても充分に叶えられます。大人の場合は子どもに比べると指の力があり、弾き方のテクニックも身につけやすく、集中力もあるため上達も早いでしょう。
ピアノを習い事に選ぶ5つのメリット
数ある習い事の中から、ピアノを選ぶメリットはたくさんありますが、大人でも子どもでもプラスになる5つの能力は以下の通りです。
- 集中力
- 記憶力
- リズム感や音感
- 協調性
- 忍耐力や継続力
どのような経験から、上記の能力が身につくのか詳しく見ていきましょう。
集中力が身につく
ピアノを習うと集中力が身につきます。ピアノは手も足も左右違う動きをしなくてはなりません。
また、楽譜を見ながら自分が奏でた音を聴く力も求められ、さまざまなことを同時に行うため、脳が活性化します。ピアノほど全身を使う楽器は、ほかにはないといっても過言ではありません。
ピアノで高い集中力を身につければ、勉強や仕事でも役に立つことでしょう。
記憶力が向上する
ピアノは、楽譜を暗記し、両手両足の動きも覚えなくてはなりません。そのため、ピアノを習うと記憶力が向上し、脳の老化防止にもつながります。
集中力や記憶力は、難しい曲にチャレンジするほうが身につきます。挫折してしまいそうになるレベルの高い曲ではなく、自分が簡単に弾けるレベルよりも少し難しい曲を選ぶのがおすすめです。
音の強弱など表現力も学ぶと、さらに脳が活性化し記憶力のアップが期待できるでしょう。
リズム感や音感が養われる
ピアノはリズム感や音感が養われます。音感とは、音の高さを認識する能力のことです。絶対音感と相対音感の2種類があります。
絶対音感は、幼少期にしか身につかないとされている、音の高さを瞬時に判断できる能力です。相対音感は基準になる音からほかの音を判断する能力で、大人になってからも身につけられます。音感やリズム感は、ほかの楽器を演奏するときにも活用できます。
また、音楽やダンスだけではなく、外国語の学習にも役に立つでしょう。発音や強弱の細かい区別が自然とできるからです。
学ぶ過程で協調性が身につく
ピアノを習うと、協調性も身につきます。楽譜に書いてある音をただ弾くのではなく、作曲者がどのような思いで作った曲なのか、その思いをどう表現したらいいのかなど、人の気持ちを考えた言動ができるようになります。
ピアノを通して協調性が身につけば、自分勝手な行動ばかりせず他人の気持ちを考えられるようになり、良好な人間関係を築くことができるでしょう。
忍耐力や継続力が身につく
ピアノは楽しいことばかりではなく、練習を重ねてもなかなか上達しないなどのスランプに陥ることがよくあります。
それでも弾けるように諦めずに努力する姿勢はやがて習慣化し、高い忍耐力や継続する力や負けない強い心を持てるようになるでしょう。
忍耐力や継続力を養うと、その先に達成感が待っています。
成功体験を繰り返し経験すると、やったことがないことでも最初から諦めたりせず、さまざまなことに意欲的に取り組めるでしょう。
ピアノの種類
ピアノの歴史は長く、時代に合わせてさまざまなピアノが誕生しました。
現在あるピアノの種類は以下の通りです。
- グランドピアノ
- アップライトピアノ
- 電子ピアノ
- キーボード
それぞれ特徴があるため、具体的に確認していきましょう。
グランドピアノ
ピアノといえばグランドピアノをイメージする人も多いのではないでしょうか。
グランドピアノはコンサートホールなどに置いてある大型のピアノで、弦が水平に張られており、鍵盤を押すと下からハンマーが弦を叩き、響板が空気を振動させ音がなります。
ハンマーの戻りがスムーズなため、リズミカルな演奏ができます。グランドピアノの屋根と呼ばれる部分は、音を反響させるためのものです。
広がりのある美しい豊かな響きは、コンサートホールなどの大きな会場に適しています。多くのピアノの曲はグランドピアノで弾くことを前提に作られています。
繊細な音の変化を自分の耳で確かめながら練習ができるため、表現力を身につけるにはグランドピアノで弾くのがおすすめです。
プロを目指したい、音楽大学を受験したい人は、自宅でもグランドピアノが弾ける環境が望ましいでしょう。
大きいイメージがあるグランドピアノですが、屋根の部分が150~160cm程度のコンパクトなサイズもあるので、自宅の部屋が狭くても置ける可能性があります。
グランドピアノについている3つのペダルは、左からソフトペダル・ソステヌートペダル・ラウド(ダンパー)ペダルといいます。
ソフトペダルは踏むと鍵盤全体が右に移動し、通常3本の弦を叩くところを2本にして音量や音色の調整が可能です。
ソステヌートペダルは、鍵盤を押した後に踏むと音を響かせたまま演奏ができます。
ラウド(ダンパー)ペダルは踏むとダンパーが弦から一斉に離れるため、音を長く振動させることができます。
グランドピアノの価格は100万円~300万円程度です。
アップライトピアノ
アップライトピアノは弦が垂直に張られており、鍵盤を押すと横からハンマーが弦を叩き音がなります。
グランドピアノより奥行きがないためコンパクトです。壁に背をつけられるため、狭い部屋でも置けるのがうれしいポイント。
ただし、グランドピアノよりもハンマーの戻りが少し遅いため、鍵盤を連打する曲を弾くと抜けてしまうデメリットがあります。
練習用や家庭用に適したピアノです。アップライトピアノについている3つのペダルは、左からソフトペダル・マフラーペダル・ラウド(ダンパー)ペダルといいます。
アップライトピアノのソフトペダルは、ハンマーレールを押し上げて、弦を近くから叩くことで音量を押さえます。
マフラーペダルは踏むとハンマーと弦の間にフェルトの幕が挟まるため、音量を下げることが可能です。
ラウド(ダンパー)ペダルは、グランドピアノと同じくダンパーが弦から一斉に離れるため、音を長く振動させることができます。アップライトピアノの価格は35万円~150万円程度です。
電子ピアノ
電子ピアノは、その名の通りグランドピアノやアップライトピアノの音を、電子技術を使って再現するピアノです。
鍵盤を押すとハンマーが動いて弦を叩く構造は、グランドピアノやアップライトピアノと同じで、叩いた音が電子信号に変化しアンプから音が出る仕組みです。
電子ピアノはコンパクトで置き場所に困りません。近年の電子ピアノは、グランドピアノの音やタッチなどを研究し、本物のピアノに劣らないほどの進化を遂げています。
電子ピアノのメリットは、音を外に出さずにヘッドホンを使用できること。弾きたいときに弾けるため、練習が夜遅くになってしまう人でも安心です。
電子ピアノは調律も不要なため、維持費がかからないのも魅力的。メトロノーム機能や録音機能がついた電子ピアノもあります。
価格は5万円~15万円程度です。さまざまな機能が搭載されているものは、少し金額が上がります。
キーボード
キーボードは電子ピアノに似ていますが、まったく違う楽器です。電子ピアノはグランドピアノやアップライトピアノの音やタッチを再現していますが、キーボードは鍵盤楽器を手軽に楽しむために作られており、ハンマーがなく鍵盤を押すとそのまま電子信号になり音が鳴る仕組みです。
鍵盤数も本来ピアノは88鍵ですが、キーボードはほとんどが32~61鍵しかありません。
繊細な音の表現はできませんが、キーボードはオルガンやストリングス、管楽器などさまざまな音を出すことができます。
また、価格は安価で1万円~5万円ほどで手に入ります。音楽は楽しめますが、キーボードはまったく違う楽器のため、ピアノを本格的に練習したい人には不向きです。
初心者がピアノを選ぶ際の3つのポイント
ピアノは決して安い買い物ではありません。とくにグランドピアノは高価なため、本格的に弾きたいと思っても、購入を迷ってしまうことも多いのではないでしょうか。
ピアノを購入するときはどのようなことに気をつけたらいいのか、ポイントを紹介します。
ピアノを弾く目的を考える
ピアノを弾く目的は人それぞれです。自分の目的にあったピアノを選びましょう。表現力にはあまりこだわらず、自分の好きな曲が弾けるようになりたい場合は、電子ピアノでも充分です。
「1曲だけ弾ければいい」など短期間の目標であれば、キーボードでもいいでしょう。クラシックが弾きたい、発表会で演奏したいなどの目標がある人は、音やタッチにこだわった電子ピアノ、またはアップライトピアノがおすすめ。
大人からピアノを始める場合、グランドピアノには手を出しにくいかもしれませんが、置くスペースがあり、本格的に弾きたいのであれば購入してもいいでしょう。
ピアノを弾く環境を考える
練習する環境によっても、おすすめのピアノが変わってきます。
広いスペースがあればグランドピアノでもいいですが、置けない場合はアップライトピアノか電子ピアノになるでしょう。
マンションやアパートなどの集合住宅は、ピアノがNGの可能性もあります。ピアノは不可でも電子ピアノは認められることもあるため、入居前によく確認しましょう。
「楽器がNGでも、電子ピアノで音を出さなければバレない」と考える人もいるかもしれませんが、ピアノは打鍵音も気にしなくてはなりません。
楽器の演奏が認められていても、防音のマットを敷くなどの工夫を行い、近所迷惑にならないように気をつけましょう。
あらかじめ予算を決めておく
ピアノを購入するときは、あらかじめ予算を決めておきましょう。ピアノの価格は幅広く、種類によって異なるため、初心者は〇万円程度のピアノがいいなどの相場を提示するのは難しいです。
まずは、目的や置くスペースを考え、どの種類のピアノを購入するか決めてから予算を検討しましょう。
ピアノは頻繁に買い替えるようなものではありません。ヤマハやカワイ、ローランド、スタンウェイアンドサンズなど信頼できるメーカーや楽器店での購入をおすすめします。
初心者が意識すべきピアノの練習方法
初心者が上達するピアノの練習方法は以下の通りです。
- メロディーを口ずさむ
- 片手練習
- 反復練習
- 自分の演奏を録音する
上記を意識して練習に取り組めば、早く上達します。具体的な練習方法を見ていきましょう。
メロディーを口ずさむ
曲を弾くためには、聴くことも大切です。まずはメロディーを口ずさむことから始めましょう。
「ピアノに触れないと練習の意味がないのでは…」と思うかもしれませんが、歌うことでたくさん得られるものがあります。
低い音から高い音に移動するときは、エネルギーが必要です。指では簡単に弾ける距離でも、口ずさむことでどのくらいエネルギーが必要なのかを理解できます。
また、鍵盤楽器は息継ぎをしないため、だらだらと間延びした演奏になってしまう恐れがあります。しかし、口ずさむことで息継ぎのタイミングがわかり、表現力を身につける訓練としてとても役に立ちます。
片手ずつ練習する
両手で弾くのはかっこいいですが、まずは片手ずつ練習しましょう。メトロノームを使用して、片手ずつ性格に弾けるようになるまで両手で弾くのは控えましょう。
どうしても早く両手で弾きたい、片手練習に飽きてしまったという場合は、区切りのいいところまで片手練習を繰り返しましょう。
片手で弾けるようになったら両手で弾いてみて、また続きも同じように行えば飽きません。
苦手な部分を何度も反復練習する
苦手な部分は何度も反復練習を行いましょう。気持ちよく弾けるためついつい自分の弾ける部分ばかり弾いてしまうことがありますが、それでは練習にはなりません。
また、一度弾けたからといってすぐに次に進んでしまうと、次回弾いたときにまた弾けなくなってしまいます。
安定して弾けるように、苦手な部分を集中して練習しましょう。苦手な部分を克服すると、ほかの曲を弾くときも応用が利きます。
自分の演奏を録音してお手本と聴き比べる
客観的に自分の演奏を聴くことは大切です。自分では上手くできたと思っても、録音して聴いてみるとリズムが不安定だったり、強弱が曖昧だったりします。
お手本と聴き比べると、改善点が発見できるでしょう。最近はスマートフォンで簡単に録音ができるため便利です。
動画を取れば、正しい姿勢で弾けているかなど、自分が弾いている姿も見られます。電子ピアノは録音機能がついているものがあるため、活用するといいでしょう。
ピアノ初心者は教室に通うべきか独学で学ぶべきか?
ピアノを始めるときに、まずは独学でチャレンジしてみようと考えている人もいるかもしれません。ピアノ教室に通う場合と独学で学ぶ場合のメリットとデメリットを確認し、自分に合った学び方を検討しましょう。
ピアノ教室に通うメリットとデメリット
ピアノ教室に通うと、自分のレベルにあった無駄のない練習方法で進められます。基礎からしっかりと学べるため、音楽理論を理解した上で演奏に取り組めます。
わからない部分はすぐに先生に確認ができ、自分では気づかないことも教えてくれるため、上達も早いです。
ピアノ教室に通うと「次回のレッスンまでにここを弾けるようになる」などの目標ができるため、モチベーションが高まり挫折もしにくいでしょう。
ピアノ教室では、年に数回発表の機会を設けているところが多いため、人前で披露するチャンスにも恵まれます。人に聴いてもらうことは、新しい発見があり、達成感を味わうこともできます。
デメリットは、独学では楽器代と楽譜などの教材費のみですが、ピアノ教室に通うとレッスン代がかかります。
また、レッスン時間だけではなく、通う時間も確保しなくてはなりません。継続するのに無理のない料金体系や立地のピアノ教室を選ぶといいでしょう。
気になる音楽教室を見つけたら体験レッスンに行ってみると、教室や講師の雰囲気がわかります。
独学で学ぶメリットとデメリット
時間に縛られず、自分が弾きたいときに自由に取り組めるのは独学のメリットです。最近は、動画やアプリなどを活用して練習する人も増えています。
ただし、客観的なアドバイスがもらえないため、弾けない原因がわからず苦手を克服しにくい点があります。上達までに時間がかかり、変な癖がついてしまう可能性も考えられるため、プロの力を借りるほうがいいかもしれません。
まとめ
ピアノは大人になってから始めても上達する楽器です。ピアノを仕事にするようなプロレベルまで達するには、幼いころからの訓練が必要ですが、憧れの曲を弾いてみたい、発表会に出てみたいなどの目標は叶えられます。
ピアノを習うとリズム感や音感はもちろんのこと、脳が活性化され集中力や記憶力アップも期待できます。作曲者の気持ちを読み取りながら自分の音を作る作業を行うため協調性が生まれ、相手の気持ちを自然と考えることができ、良好な人間関係を築くことにも役に立つでしょう。
ピアノには種類があります。初心者がピアノを購入する際は、目的や置くスペースをよく考え、予算を決めてください。
ピアノを始めるか悩んだときは、独学で始めてみるのも悪くはありませんが、上達にはかなりの時間を要します。
レッスン代などの費用はかかりますが、変な癖がついてしまう前に、ピアノ教室で基礎からしっかりと学ぶことをおすすめします。
忙しい人にも通いやすい工夫がされている音楽教室が増えているため、まずは体験レッスンに行ってみるといいでしょう。